「ニブンノジブン」(2019年~)
作品紹介
貴方に見せる私と自分の為の俺、どちらも本当の自分。
<導入>
多重人格とか
LGBTだとか
私はどれに当てはまるのだろう
「行ってらっしゃい」
朝、仕事へ行く彼氏を見送ってのんびりと支度をはじめる。
と言っても朝ご飯の後片付けをして部屋を少し掃除するだけ。
時間になったら適当な服を着て「行ってきます」と呟いてから部屋を出る。
キーホルダーのついた鍵をチャリンと鳴らして駅へ歩いた。
駅に着いたら定期を使って改札を通り電車に乗る。
隣駅に停車した所で電車を降りる。
定期に記載されたバイト先の最寄り駅までは後4駅あるけれど、
駅から徒歩5分弱の古いアパートへと向かう。
スカートを揺らしながらアパートに着くと、
キーホルダーも何もついていない鍵を取り出しドアを開けた。
「ただいま」
小さなワンルームはまるで倉庫の様で生活感がない。
洗濯機はあるけど冷蔵庫は見当たらないし、
キッチン周りも入居当時のままで使われた形跡もない。
あるのは大量の服やアクセサリー、化粧品、
数本ある未開封のペットボトルだ。
着ていた服を脱ぎ、ハンガーラックにかけられた服と
クローゼットにある服を慣れた手つきで取って着替える。
鏡でチェックしてから今度はカラコンをいれて化粧をする。
ウィッグを被りワックスをつけ、シルバーのアクセサリーで飾る。
玄関に向かい、履いてきたパンプスではなく、
靴箱にしまっていたゴツめのミリタリーブーツをはく。
…支度は完璧だ。
ドアを開けて部屋を出ると、また「行ってきます」と呟いて鍵をかけた。
ここで着替えてから、また電車に乗り仕事(バイト)へ行く。
それがいつもの"俺"の日常。
さっきの1LDKは「私と彼」の部屋。
このワンルームは「俺」の部屋。
スカートをはいた女の自分も、
ズボンをはいた男の自分も、
どちらも本当の自分なのだ。